IT導入支援事業者になる方法|登録要件から申請手順まで完全解説

IT導入支援事業者になる方法|登録要件から申請手順まで完全解説

「うちの会社もIT導入支援事業者になれるのかな?」
「お客様から補助金を使いたいと言われたけど、どうすればいいの?」
「登録申請って難しそうだけど、本当に自社でできる?」

こんな悩みをお持ちのIT企業の経営者や担当者の方は多いのではないでしょうか。実は、このような相談を私たちは毎日のように受けています。

最近では「IT導入補助金を使いたい」という企業が増えています。しかし、ここで重要な事実があります。お客様がIT導入補助金を使うためには、あなたの会社がIT導入支援事業者として登録し、さらにITツールも登録しなければならないのです。つまり、登録していない会社のツールでは、お客様は1円も補助金を受け取ることができません

私は、IT導入補助金の申請サポートを専門とするコンサルティング会社で、これまで数多くのIT企業様の登録支援を行ってきました。その経験から断言できることは、正しい手順と準備さえできれば、ほとんどの企業がIT導入支援事業者になれるということです。

そこでこの記事では、IT導入支援事業者として登録するための要件から具体的な申請手順まで、初めての方でも理解できるように詳しく解説します。

この記事を読めば「自社がIT導入支援事業者になれるかどうか」「どのような準備が必要か」「申請の具体的な流れ」がすべて分かります。

IT導入支援事業者として登録することで、あなたの会社は競合他社との明確な差別化を図り、新規顧客獲得の強力な武器を手に入れることができます。さあ、一緒に第一歩を踏み出しましょう。

目次

1. IT導入支援事業者とは?基本から理解する重要ポイント

1-1. IT導入補助金はIT導入支援事業者なしでは使えない制度

まず最初に、IT導入補助金の最も重要な仕組みについてお話しします。

IT導入補助金は、中小企業がITツールを導入する際に、その費用の一部を国が補助してくれる制度です。しかし、ここに大きな特徴があります。この補助金は、企業が単独で申請することはできません。必ず「IT導入支援事業者」と呼ばれる専門業者と二人三脚で申請する必要があるのです。

例えば、あなたが開発した素晴らしい顧客管理のソフトがあったとしましょう。お客様はそのソフトを気に入って「IT導入補助金を使って導入したい」と言ってくれました。しかし、もしあなたの会社がIT導入支援事業者として登録していなければ、お客様は補助金を1円も受け取ることができません。どんなに優れたソフトでも、補助金の対象外となってしまうのです。

さらに重要なのは、IT導入支援事業者として登録するだけでは不十分だということです。販売するITツール自体も、事前に登録申請を行い、承認を受ける必要があります。つまり、「事業者登録」と「ツール登録」の両方が揃って初めて、お客様が補助金を活用できるようになるのです。

また、登録できるITツールにも条件があります。パッケージ製品やサブスクリプション型のツールである必要があり、オーダーメイドの開発案件は対象外となります。これは、補助金制度が「すでに完成していて、すぐに導入効果が見込める製品」を対象としているためです。

  • IT導入補助金は「IT導入支援事業者」経由でのみ使うことができる補助金。
  • その中でも、「ITツール」として登録された製品のみIT導入補助金を使うことができる。
  • パッケージ製品やサブスクリプション型のツールのみ登録できる。

1-2. IT導入支援事業者の役割と責任

IT導入支援事業者の役割は、単にITツールを販売するだけではありません。お客様である中小企業と一緒になって、補助金申請から導入、そして効果測定まで、一連のプロセスをサポートする重要なパートナーとなります。

具体的には、まず申請書類の作成支援があります。お客様の多くは補助金申請が初めてで、どのような書類を準備すればよいか分かりません。事業計画書には「なぜそのITツールが必要なのか」「導入によってどのような効果が期待できるのか」を具体的な数字で示す必要があります。例えば「業務効率を上げたい」という漠然とした目標ではなく、「現在1日3時間かかっている請求書処理を1時間に短縮し、年間500時間の業務時間削減を実現する」といった具体的な目標設定が求められます。

IT導入支援事業者は、こうした計画づくりを一緒に考え、説得力のある申請書類の作成をサポートします。また、補助金が採択された後も、実際の導入作業、従業員への操作指導、そして導入後の効果測定まで、継続的にフォローしていく責任があります。

特に2025年からは、不正受給防止のため審査が厳格化されており、効果測定の報告を怠ると補助金の返還を求められる可能性もあります。このように、IT導入支援事業者は単なる販売者ではなく、お客様の事業改善を共に実現するパートナーとしての役割を期待されているのです。

  • IT導入支援事業者は、ITツールを使ってお客様が業務効率化を果たせるようサポートする義務がある。

1-3. IT導入支援事業者になる3つのビジネスメリット

IT導入支援事業者として登録することで、あなたの会社には大きなビジネスチャンスが生まれます。

第一に、競合他社との明確な差別化が図れます。同じような機能・価格帯の製品を販売している競合がいたとしても、「うちなら補助金が使えますよ」と言えるかどうかで、お客様の選択は大きく変わります。実際、私がサポートした企業の中には、IT導入支援事業者に登録したことで、それまで価格競争で苦戦していた案件を次々と獲得できるようになったケースが多数あります。

第二に、新規顧客獲得の強力な提案材料となります。「導入費用の負担を大幅に軽減できます」という提案は、特に資金繰りに悩む中小企業にとって非常に魅力的です。補助金を活用することで、通常なら予算的に難しかった企業も顧客になる可能性が広がります。

第三に、既存顧客との関係強化につながります。すでに取引のあるお客様に対して「補助金を活用して新しいシステムを導入しませんか」と提案することで、追加受注の機会が生まれます。さらに、補助金申請のサポートを通じて、お客様の経営課題をより深く理解し、信頼関係を深めることができます。

佐藤勇樹

ただし、お客様が過去にIT導入補助金を使ってツールを導入している場合は、様々な制限があるのでご注意ください。

1-4. IT導入補助金の仕組みと支援事業者の位置づけ

IT導入補助金の全体像を理解することは、IT導入支援事業者として活動する上で非常に重要です。

この制度では、IT導入支援事業者と補助事業者(中小企業)が「共同事業体」として補助金申請を行います。つまり、単なる売り手と買い手の関係ではなく、共に事業を推進するパートナーという位置づけなのです。

補助金の流れを簡単に説明すると、まずIT導入支援事業者と補助事業者が共同で申請を行い、採択されれば交付決定を受けます。その後、ITツールの導入を行い、実績報告を提出することで、補助金が補助事業者に支払われます。

2025年度からは、いくつかの重要な変更点があります。例えば、セキュリティ対策推進枠が新設され、サイバーセキュリティ関連のツールへの補助が手厚くなりました。また、インボイス対応類型では、会計ソフトなどと合わせてハードウェアも補助対象となるケースがあります。こうした最新の制度を理解し、お客様に最適な提案ができることも、IT導入支援事業者の重要な役割です。

佐藤勇樹

なので、IT導入支援事業者になるには、ある程度自社でIT導入補助金について理解しておく必要があるのと、自社にそのリソースが欠けている場合は、当社のような専門のコンサルティング会社とパートナーシップ契約を結んでおく必要があります。

2. IT導入支援事業者の登録要件|必ずクリアすべき7つの条件

2-1. 法人要件と事業実績

IT導入支援事業者として登録するためには、いくつかの要件をクリアする必要があります。まず最も基本的な要件から説明しましょう。

第一に、日本国内で法人登記されている必要があります。個人事業主でも条件を満たせば登録可能ですが、信頼性の観点から法人の方が有利です。また、外国法人の日本支店も登録可能ですが、日本で納税していることが条件となります。

第二に、少なくとも1期目の決算を迎えている必要があります。これは正確には「税務署から納税証明書が取得できる」ことが条件となります。設立したばかりの会社で、まだ決算を迎えていない場合は、残念ながら登録申請はできません。これは、事業の継続性と信頼性を担保するための要件です。

第三に、直近2年分の基本的な決算数字を提出する必要があります。赤字決算でも問題ありませんが、事業が継続的に行われていることを示す必要があります。

2-2. ITツールの販売実績要件

次に重要なのが、ITツールの販売実績です。これは多くの企業が見落としがちなポイントですが、非常に重要な要件です。

登録申請するITツールは、すでに販売実績がある必要があります「これから販売を始める新製品」や「開発中のソフトウェア」は登録できません。なぜなら、補助金制度は「すでに市場で評価されている製品」を対象としているからです。

販売実績を証明するために、「販売実績一覧」など、販売実績に関わる書類などを提出します。この書類には、過去に販売した顧客名、販売時期、販売数量、販売金額などを記載します。

佐藤勇樹

販売実績については、1社でも特に問題はありません。また、子会社や関連会社への販売などでも実績として認められます。

また、ITツールはパッケージ製品またはサブスクリプション型である必要があります。オーダーメイドの開発案件や、カスタマイズが前提となるような製品は対象外です。これは、補助金の効果を客観的に測定するため、標準化された製品である必要があるからです。

2-3. ツールの周知やサポート体制の構築要件

IT導入支援事業者として活動するには、しっかりとしたサポート体制や周知の体制を構築している必要があります。

まず、顧客からの問い合わせに対応できる窓口が必要です。これは24時間365日対応する必要はありませんが、営業時間内には確実に連絡が取れる体制を整える必要があります。電話、メール、あるいはチャットなど、複数の連絡手段を用意することが推奨されています。

次に、導入後のアフターフォロー体制も重要です。ITツールを導入して終わりではなく、その後の操作指導、トラブル対応、アップデート対応など、継続的なサポートができる体制が求められます。特に、補助金を活用した場合は、導入後の効果測定も必要となるため、そのサポートも行える必要があります。

さらに、情報セキュリティ対策の取り組みも審査対象となります。プライバシーマークやISMSなどの認証を取得していることは必須ではありませんが、基本的なセキュリティポリシーを定め、実践していることを示す必要があります。

佐藤勇樹

一般的な会社であれば、この辺りの要件は基本的に満たしていることが多いと思います。ただ、その辺りの管理が杜撰な場合は、これを機会に、ある程度体制を整えておいた方が良いでしょう。

3. 登録申請の具体的な流れ|失敗しない5ステップ

3-1. STEP1:IT導入補助金ホームページから仮登録

それでは、実際の登録申請の流れを順を追って説明していきます。IT導入補助金はオンラインで全て行う電子申請になるので、その点はご注意ください。

最初のステップは、IT導入補助金の公式ホームページから仮登録を行うことです。IT導入支援事業者ポータルに「IT導入支援事業者の仮登録申請」というボタンがありますので、そこから入ります。

仮登録では、連絡先メールアドレスなどの基本情報を入力します。ここで注意したいのは、登録するメールアドレスは今後重要な連絡を受け取るものになるため、確実に受信できるアドレスを使用することです。フリーメールでも問題ありませんが、迷惑メールフィルタの設定を確認し、事務局からのメールが受信できるようにしておきましょう。

仮登録が完了すると、登録したメールアドレスに確認メールが届きます。そのメール内のURLをクリックすることで、仮登録が完了します。

「IT導入支援事業者」と「ITツール」の登録・申請は同時に行う必要があります。もちろん、入力内容は都度保存されるので、数度に分けて登録する形でも構いませんが、最終的に両方揃わないと審査に入らないので、両方準備してから申請をすることをお勧めします。

3-2. STEP2:IT導入支援事業者の登録

仮登録が完了すると、ここから、IT導入支援事業者への登録ができます。

IT導入支援事業者の登録は、会社の基本情報や2期分の簡易的な決算の情報、担当者情報、決算情報、IT導入支援事業者としての取り組みなどを記入します。また、「履歴事項全部証明書」「納税証明書」「販売実績」などの必要書類を添付します。

佐藤勇樹

「履歴事項全部証明書」や「納税証明書」は取得3ヶ月以内のものが必要なので、直近のものを入手してください。また、「販売実績」は事務局の所定の様式を用います。

3-3. STEP3:ITツール情報の入力

IT導入支援事業者登録が終わったら、ITツールの登録を行います。

佐藤勇樹

ITツールの登録の場合、申請する方がITについての知識がないと申請は難しいかと思います。

登録内容としては、「機能説明資料」という事務局の要件を満たしたシステムの仕様書、システムの価格妥当性を説明した「価格説明資料」、システムのマスターデータの記述など、ある程度システムを知っている人が書く内容が多いです。なので、ITツール登録については、早めに自社のシステムエンジニアに協力を仰ぐか、当社のようなITに強いコンサルティング会社に依頼するのが良いでしょう。

佐藤勇樹

また、「自社のWebページ(製品紹介であることが望ましい)」の掲載も必須です。ただこれは、Google Docsなどの公開リンクなどでも大丈夫なので、仮に自社のホームページをまだ持ってない場合でも、そこまで大きな問題にはならないかと思います。

3-4. STEP5:審査と差し戻し

すべての入力と書類提出が完了したら、申請を確定させます。その後、事務局による審査が行われます。

審査期間については1~2週間程度で最初の差し戻しが来ます。差し戻しの内容は様々ですが、基本的に1度は差し戻しがあると考えておいた方が良いでしょう。

もし差し戻しとなった場合でも、理由を確認して改善すれば再申請が可能です。多くの場合、書類の不備や説明不足が原因ですので、そこを修正して再申請を行います。

佐藤勇樹

事務局からの差し戻し連絡は、ハッキリ不備が書いてあるケースはあまりないです。なので、まずは差し戻しの箇所をチェックして、修正箇所が良く分からないようであれば、事務局に問い合わせましょう。
下記ページの下部に、事務局のお問い合わせ電話番号が記載されています。

4. コンソーシアム形態での登録|複数企業で申請する方法

4-1. コンソーシアムを組むメリット

IT導入補助金は、複数の企業でコンソーシアムを組んで申請することができます。

例えば、会計ソフトをIT導入補助金で使う場合、コンソーシアムを組んでおけば、幹事社が登録・申請した内容を、そのまま構成員が使うことができるので、申請の時短になります。特に、一番やっかいな「ITツール登録」について、かなりの工数削減になるので、その点はメリットかと思います。

なので、例えば自社のスタッフが少なくて登録のリソースを割くことができない、などの場合は活用しても良いかと思います。

デメリットとしては、申請の自由度がやや薄れる点と、構成員も販売実績は必要なので、そこまでコンソーシアムを組むメリットが積極的には見出せない点かと思います。あとは、幹事社が提出する書類などは増える点や、構成員の管理をする必要がある点もデメリットかと思います。

また、そもそもコンソーシアムを組んでいる会社自体が少ないです。これは予め、幹事社と構成員の間で各種下打ち合わせなどが必要なので、その調整に時間がかかるためかと思います。

佐藤勇樹

コンソーシアムについて「構成員はそのツールの販売実績が必要ないのでは?」と勘違いされている方もいますが、どちらにせよ、ITツールの販売実績は必要です。

4-2. コンソーシアム協定書の作成

コンソーシアムを組む場合、協定書の作成が必須となります。ただ、これは事務局指定の様式があるので、その通りに記述すれば特に問題はないです。とはいえ、幹事社が単独で協定書を作ることはできないので、やはり、コンソーシアムの一番のデメリットは、幹事社と構成員の間で各種調整をする手間がある点でしょうか。

5. ITツール登録で失敗しないための実践的アドバイス

5-1. 登録可能なITツールの種類と条件

ITツールの登録は、IT導入支援事業者登録と同じくらい重要です。どんなに優れたツールでも、登録要件を満たさなければ補助金の対象にはなりません。

登録可能なITツールは、大きく分けてソフトウェアとサービスがあります。会計ソフト、顧客管理システム、在庫管理システムなどの業務システムから、セキュリティソフト、グループウェアまで幅広く対象となります。

重要なのは、そのツールが「生産性向上に資する」ことを明確に説明できることです。単なる便利ツールではなく、業務効率化や売上向上に直接貢献することを、具体的な数値で示す必要があります。

佐藤勇樹

IT導入補助金のツール登録は、下記リンクの業務プロセスを効率化するツール以外は対象外です。プロセスの内容は明確に定められているので、ご参考ください。たまに下記のプロセスを拡大解釈して申請する方もいらっしゃいますが、そのような申請は基本、通りません。

また、「既存のツールをアップグレードする」「既存のツールに新たな機能を追加する」ものもNGなので、ご注意ください。あくまで完全新規のツールを導入する場合のみ対象となります。

5-2. 審査に通りやすいITツール登録のコツ1 : 機能説明資料

審査を通過するためには、いくつかのコツがあります。

まず、機能説明は具体的に書くことです。ITツール登録には「機能説明資料」を作成する必要がありますが、ツールの「どの部分が」「どのプロセス改善に繋がるか」を明確に記述する必要があります。

また、機能説明資料には、ITツールの全ての管理画面をキャプチャーする必要があります。この画面キャプチャーが、そのツールが説明資料のプロセス改善をの機能を備えている証明になるからです。

そして、特に重要なのが「ITツール名(製品名でも可)」が必ず上記のキャプチャーした各管理画面上に表示されている必要がある点です。

佐藤勇樹

特に2025年の場合、管理画面上の表記が略称などの場合でも、事務局から差し戻しがあったケースがありました。なので、申請書類を作る段階で、管理画面上の表記と申請書類のツール名や製品名を合わせておいた方が無難かと思います。

5-3. 審査に通りやすいITツール登録のコツ2 : 価格説明資料

価格説明資料については、相当厄介です。まず、事務局指定の用語が誤解を招きかねない書き方なのと、価格設定について各種のトラップ、つまり、公募要領に書いてないレギュレーションがあるので、IT導入補助金のツール登録に慣れていない人が理解して書くのは相当困難かと思います。

例えば、大きな枠組みとして「ソフトウェア価格」と「ライセンス価格1」「ライセンス価格2」というのがあります。また、製品の類別も「買い切り製品」と「SaaS製品」があります。その中でも、クラウドサーバーは誰が用意するのか、ソフトウェアの使用権は設定されているか、などの報告などもあります。

そして、価格については各々「標準価格」と「最小価格」の設定もあります。もちろん、単一の価格のみであれば、「標準価格」のみの記述で問題ないですが、割引販売が行われる場合は「最小価格」も書く必要があります。

また、「ソフトウェア価格」とは別に「導入費用」や「オプション費用」「カスタマイズ費用」などもあり、各々の費目が厳密に決まっているので、相当に厄介です。

佐藤勇樹

このように、価格設定については複雑で、パターンが複数に分かれているので、しっかり「全ての(←ここ重要)」IT導入補助金関連の書類に目を通すか、当社のような専門業社に依頼するのが良いかと思います。

その中でも、特に注意すべき点だけ、下記に記します。

価格については、年間300万円を超えない設定にする。

販売価格が300万円を超えると、「価格理由申請書」という追加書類を出す必要があります。これは、そのツールの市場性、競合他社製品の価格、そのツールが持っている特殊な機能、ツールの投資計画と資金回収計画など、平たくいうと「経営計画」に近い書類を作成して提出する必要があります。独自に経営企画部などを持っている企業であればともかく、通常の企業がこのような書類を提出するのは無理があります。

佐藤勇樹

ちなみに、ソフトウェア価格を300万円未満、ライセンス価格を300万円未満にすることで、初年度600万円程度のソフトウェアであれば審査に通すことはできます。

また、下記の点もポイントです。

従量制を匂わす語句は、全ての書類で書かない。

IT導入補助金は、例えば使用量であったり、アカウント数であったりといった「従量制」に基づいた申請は認められません。例えば「ストレージは○○GBまで」や「アカウント数は○○アカウントまで」という上限キャップを設ける点については認められますが、従量によって価格の上下を設定することは認められてません。例外として例えばパソコンにインストールするタイプのライセンス型であれば、従量制が認められるケースがあります。

佐藤勇樹

なので、どうしても従量制を使わざるを得ない場合は、標準価格と最小価格の間でやりくりするか、上限キャップだけ設けて、それを超えた場合は、IT導入補助金を使わないで通常請求という形を取れば、今のところは大丈夫です。

6. 登録後の運用と成功のポイント|継続的に活動するために

6-1. 補助事業者への営業・提案方法

IT導入支援事業者として登録されたら、いよいよ本格的な活動開始です。しかし、「登録したけれど、どうやって営業すればいいか分からない」という声もよく聞きます。

効果的なアプローチは、まず既存顧客から始めることです。「IT導入補助金が使えるようになりました」という案内を送り、興味を持った企業から順に提案していきます。その際、単に「補助金が使えます」ではなく、「御社の○○という課題を、補助金を活用して解決しませんか」という課題解決型の提案が効果的です。

佐藤勇樹

IT導入補助事業者の義務として、「ITツールを使った業務の効率化を積極的に中小企業に案内する」というのがあるので、そのようにして頂ければと思います。

6-2. 申請サポートの実務フロー

実際の申請サポートでは、お客様と二人三脚で進めていく必要があります。

まず、お客様の現状と課題をヒアリングし、最適なITツールと補助金の枠を選定します。次に、事業計画書の作成を支援します。この際、お客様自身が内容を理解し、自分の言葉で説明できるようにすることが重要です。

申請書類の作成では、専門用語を避け、誰が読んでも理解できる平易な文章を心がけます。また、数値目標は現実的で達成可能なものを設定します。

6-3. 実績報告と効果測定のフォロー

補助金が採択されて終わりではありません。むしろ、その後の交付申請と実績報告が重要です。この2つをきちんと行なって、初めて補助金が支給されます。

導入から一定期間後、当初設定した目標がどの程度達成できたかを測定し、報告書を作成します。目標が達成できていない場合は、その理由と改善策を明確にする必要があります。

この段階でのフォローが不十分だと、最悪の場合、補助金の返還を求められることもあります。そのため、導入後も定期的にお客様とコミュニケーションを取り、必要なサポートを提供することが大切です。

佐藤勇樹

IT導入補助金は不正が横行した関係で、特に審査は厳しく見られています。なので、十分に注意して申請・交付申請・実績報告まで行わないと、補助金が支給されません。

7. よくある質問と回答|登録前に知っておきたいQ&A

IT導入支援事業者・ツール登録にかかる費用と期間は?

登録申請自体に費用はかかりません。申請から登録まで、差し戻しを含めると1か月から1ヶ月半程度かかると考えておいてください。

IT導入支援事業者・ツール登録は個人事業主でも登録できる?

個人事業主でも条件を満たせば登録可能です。ただし、開業後1期目の確定申告と納税は終わらせておく必要があるのと、ツールの販売実績は必要なので、その点はご注意ください。

他社製品の販売代理店でも申請可能?

自社開発製品でなくても、登録は可能です。また、特に正規販売代理店などである必要もありません。ただし、そのツールの販売実績は必要です。

委託販売の場合はどうすればよい?

委託販売の場合は、委託先か委託元のどちらかでIT導入支援事業者の登録することが可能です(もちろん、委託先/委託元両方で登録することもできます)。
1点注意なのは、委託元のみがIT導入支援事業とツール登録した場合は、委託先がツールを契約 / 販売をした場合、IT導入補助金を最終顧客が使うことはできません。必ずIT導入支援事業者(委託元)と契約や登録を結ぶ必要があります。
ただ、委託元から委託先へ販売奨励金やインセンティブを払うのは認められているので、委託販売の場合は、委託先と商流を含めて、予め取り決めをしておいた方が良いでしょう。

すでに当社のSaaS製品を使っているお客様に、契約更新のタイミングでIT導入補助金を使いたい

すでに導入済みのツールについては、IT導入補助金を使うのは不可です。また、全ての補助金は「交付申請」後に契約した場合は無効となるので、必ず「交付申請」をして、事務局より許可を貰ってから契約やツールの導入をするようにしてください。

8. プロのコンサルタントを活用する選択肢|成功確率を上げる方法

8-1. コンサルティング会社に依頼するメリット

ここまで読んで「やはり自社だけでは難しそう」と感じた方もいるかもしれません。そんな時は、専門のコンサルティング会社に相談することも一つの選択肢です。

プロのコンサルタントは、これまでの豊富な経験から、審査のポイントを熟知しています。どのような書類の書き方が評価されやすいか、どんな点で不採択になりやすいかを理解しているため、初回から高い採択率を実現できます。

また、申請書類の作成だけでなく、登録後の運用アドバイスや、補助事業者への提案方法なども含めて、トータルでサポートしてもらえます。

8-2. 費用対効果の考え方

コンサルティング費用は会社によって様々ですが、成果報酬型のサービスを選ぶことで、リスクを最小限に抑えることができます。

採択されなければ費用が発生しない成果報酬型なら、初期投資を抑えながらプロのサポートを受けられます。また、採択後に得られる売上増加を考えれば、十分にペイできる投資といえるでしょう。

重要なのは、費用だけでなく、そのコンサルティング会社の実績や専門性を確認することです。IT導入補助金に特化した会社を選ぶことで、より効果的なサポートを受けることができます。

佐藤勇樹

当社のように、ITの経験豊富なコンサルタントが在籍している企業に依頼するのが良いと思います。コンサルティング会社によっては、ITに詳しくない人間がIT導入補助金を行なっているケースもあるので、注意が必要です。

まとめ:IT導入支援事業者として成功するために

ここまで、IT導入支援事業者になるための要件から申請手順、そして成功のポイントまでを詳しく解説してきました。

最も重要なことは、IT導入補助金はIT導入支援事業者なしでは使えない制度だということです。つまり、あなたの会社が登録することで、初めてお客様に補助金のメリットを提供できるようになるのです。

確かに、登録申請には様々な要件があり、準備も必要です。しかし、正しい手順を踏み、必要な書類を整えれば、多くの企業が登録可能です。そして一度登録すれば、競合他社との明確な差別化を図り、新たなビジネスチャンスを獲得できます。

もし「自社だけでは不安」と感じるなら、専門家のサポートを受けることも検討してください。重要なのは、一歩を踏み出すことです。

IT導入支援事業者として、お客様の生産性向上に貢献し、共に成長していく。そんな未来への第一歩を、今こそ踏み出してみませんか。

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この記事を書いた人

佐藤勇樹のアバター 佐藤勇樹 中小企業診断士

千葉商科大学出身で、出身大学初の「中小企業診断士」の資格を取得。
大学卒業後、大塚商会に就職し3年働いたのち融資・補助金コンサルタントとして独立。
独立3年での融資・補助金の調達総額は9億1,431万円(令和5年12月時点)。
現在は中小企業診断士として、引き続き補助金コンサルタントとして補助金の申請・代行業務を中心にしつつ、自身の補助金コンサルタントのスキルを体系化した「補助金コンサルタント養成講座」を主催し、後進の士業の育成を行っている。

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