【IT・Web企業向け】AIや自社サービス開発でも使える?「研究開発税制」の基本と知っておくべき落とし穴

「自社で革新的なAI技術やSaaS製品を開発しているが、節税できる制度はないか」「研究開発税制という言葉は聞いたことがあるが、工場を持つ大企業だけの特権だと思っている」など、自社開発システムへの投資負担にお悩みのIT・Web企業の経営者様、大変お待たせいたしました。株式会社Result代表取締役、中小企業診断士・認定経営革新等支援機関の佐藤勇樹です。

結論から申し上げます。研究開発税制(試験研究費税額控除)は、製造業やバイオ産業だけの制度では決してありません。生成AI、高度な解析アルゴリズム、SaaS、自社独自のWebプラットフォームなど、自社プロダクトの開発・刷新を行っているIT・サービス企業も、税法上の要件を満たせば十分に法人税の税額控除(節税)の対象になります。

私は、大塚商会でのIT導入実務キャリアを経て独立し、これまでに融資・補助金による資金調達総額は9億1,431万円(令和5年12月時点。融資を含めると現在は11億円以上)を手掛け、報道番組「ABEMA Prime」等のメディアにも出演して中小企業支援のコンプライアンス(健全化)の重要性を発信してきました。その財務・税務コンサルティングの現場から断言すると、この税制はキャッシュアウトを劇的に抑え、次なる開発投資へ資金を回す最高の武器になります。しかし、実務上、税務調査で最も厳しく否認されやすい「エンジニア人件費の集計」など、非常に厄介な落とし穴が潜んでいます。

💡 本記事であなたが得られる成果

今回のブログでは、IT企業が対象となる「サービス開発」の厳格な4プロセス、プロジェクトに参加していても対象外となる「エンジニア人件費」の境界線(他記事とも同期するユカ様の事例などの実務データ)、税額控除を最大化する中小企業特例、税務調査に耐えうるエビデンス(実務書類)の整備方法について、実務者ならではの極秘ノウハウを完全網羅して解説します。

1. WebサービスやAI開発が対象になる「サービス開発」要件とは?

税法上、サービス業におけるソフトウェアやシステム開発が「研究開発(試験研究)」と認められ、税額控除の対象となるには、租税特別措置法に規定された「サービス開発」の2つの基本要件を完全に満たす必要があります。

①「対価を得て提供する新たなサービス(役務)」の開発であること

まず前提として、開発するシステムやプロダクトは、自社専用の社内業務効率化ツール(他者に提供せず、対価を得ないもの)であってはなりません。有料のSaaSツールや、アプリ内に広告を掲載して第三者から広告料収入(収益)を得るモデルなど、何らかの形で他者から対価を得て提供するビジネス目的のサービス開発であることが必須条件です。

なお、「新たなサービス」とは、世界初の画期的なテクノロジーである必要はありません。競合他社がすでに提供している類似サービスであっても、自社として「これまでに提供したことがない、新規に展開するサービス」であれば、要件を満たします。また、開発したシステムを他社へ有料提供しつつ、自社の作業効率向上のために社内で一部併用しているケースであっても、対価を得る目的が主軸にある限り、開発にかかる経費は対象に含めることができます。

②「4つのプロセス(工程)」を計画段階で決定し、すべて経ること

サービス開発を試験研究費に該当させるためには、その開発プロジェクトの計画段階において、以下の「4つの工程」すべてを順行して実行することをあらかじめ意思決定し、実行していなければなりません。

  1. 分析対象となるデータの準備:各種センサーによる自動収集、API等による外部からのデータ取得、または過去に自社で蓄積されたビッグデータの整理など、解析可能なデータを準備・構築する工程。
  2. データの分析:データサイエンスや統計学の専門知識を有する者が、AI技術、機械学習アルゴリズム、または高度な数学的モデルを用いて、準備したデータを深く解析・分析する工程。
  3. サービスの設計:データの分析によって導き出された一定の「法則性」「アルゴリズム」を実際のビジネスプロセスに利用するために、新たなサービスや機能を設計する工程。
  4. サービスの適用:開発された新たなサービスの性能や品質、再現性を実際の環境下でテスト・検証する工程。

2. 【最重要の落とし穴】すべてのエンジニア人件費が対象になるわけではない!

IT企業が研究開発税制を検討する際、実務上で最も発生しやすく、税務調査で最も厳しく否認(税金の追徴)を食らいやすいのが、「自社のサービス開発に直接従事したエンジニアの人件費なら、すべて税額控除の対象に含めることができる」という思い込みです。

ここに非常に深い落とし穴があります。税法上、サービス開発において税額控除の対象となる人件費は、以下のように「情報解析専門家」の定義を満たし、かつ、開発業務に「専ら(専属的に)従事」した従業員に厳しく限定されています。

■ 税法上の「情報解析専門家」の定義

情報の解析に必要な確率論や統計学に関する知識、および情報処理に関して必要な専門的知識を有し、その専門的知識をもってデータの解析・分析や、それに基づくサービス設計、再現性検証の業務に専ら従事する者を指します。
※学歴や特定の情報処理資格の有無は必須条件ではありません。これまでの職歴、社内研修履歴、OJTでの教育実績、開発成果などを通じて、該当する専門知識を確実に有していると会社が合理的に判断し、説明できる人材であれば対象となります。

したがって、プロジェクトメンバーの中で「情報解析専門家」に該当しないスタッフ、または専門家であっても研究開発以外の「一般的な周辺業務」に時間を割いている場合、その時間分の人件費は1円も試験研究費(控除のベース)に算入できません。

💡 開発に直接参加していても「対象外」となる業務と実例

たとえ自社SaaSやAIプロダクトの新規プロジェクトに朝から晩まで直接従事していても、以下のような業務は「試験研究活動」の対象経費から明確に除外されます:

  • 単に画面のUI/UXをコーディングするフロントエンドエンジニアやデザイナー
  • 一般的なサーバー構築、ネットワーク設定、システムインフラの管理を行うインフラエンジニア
  • データ収集のためのセンサー設置や、データの入力作業などの補助業務を行うスタッフ
  • サービス開発の企画、マーケティング、ユーザーインタビュー、要件定義のみを行うディレクター
  • 外注費(委託試験研究費)の中に含まれる、上記に該当しない外部エンジニアの工数部分

【他補助金とも繋がる、人件費カウントの境界線】
例えば、前述の「持続化補助金」や「デジタル化・AI導入補助金」の事例でも登場したアパレル製造小売事業者におけるスタッフ、ユカ様(基本給月額274,500円)の実際のデータで考えてみましょう。
もし、自社で「アパレルの3D立体ビジュアルを生成するAIアルゴリズム」の自社開発プロジェクトを立ち上げ、ユカ様がプロジェクトに参加したとします。ユカ様はフロントエンドの画面設計、HTMLやCSSのコーディング、UI/UXデザインを専属で担当しています。しかし、ユカ様は「統計学や確率論に基づきAIアルゴリズムそのものを解析・設計する」わけではないため、税法上の『情報解析専門家』には該当しません。プロジェクトへ直接従事しているものの、ユカ様の給与(人件費)は、本税制の試験研究費の計算対象からは完全に除外(対象外)としなければならないのです。
実務においては、日報やプロジェクトのアクセスログ等を徹底して整備し、メンバーの中で「誰が情報解析専門家にあたるのか」を厳密に区分し、その者が専ら研究開発活動に従事した「時間割合(工数)」のみを1分単位で適正に按分計算しておく管理体制が必要不可欠です。

3. IT企業であっても「対象外」となる開発活動

IT・Web分野のシステム開発であっても、税法上「試験研究活動」に含まれないものとして明確に除外されている、以下の4つの代表的な活動に注意してください。

  • バグ取り・システムの保守運用
    システムの製品マスター(初期リリース版)完成後に行う、プログラムの機能上のバグ(障害)の除去、動作不具合 of 修正、通常のシステム保守、バージョンアップデート、操作に関するユーザーサポート活動は一律で対象外となります。
  • 他社製品の単純な模倣(コピー製品開発)
    リバースエンジニアリングなどを用いて、すでに他社で実用化されている既存のアルゴリズムやシステム、Webサービスの仕組みをそのままコピーするだけの活動は「新たなサービス」とは認められません。
  • デザイン重視のUI/UX設計
    製品の性能や解析効率の向上を目的としないことが明らかな、意匠(デザイン)のみの考案や、ユーザーインターフェースの見栄えを良くするためだけの変更・試作は対象外となります。
  • 一般的なマーケティング・市場調査
    自社サービスの販売拡大を目的とした市場動向調査、ユーザー層へのアンケート収集、広告宣伝効果の検証などは、開発活動とは一切みなされません。

4. 中小企業ならさらにお得!「中小企業技術基盤強化税制」の恩恵

資本金1億円以下で、常時使用する従業員数が1,000人以下などの要件を満たす「中小企業者等」であれば、大企業(一般企業)よりもはるかに優遇された「中小企業技術基盤強化税制」を適用することができます。

この制度の最大のメリットは、一定の要件を満たした試験研究費(エンジニア人件費や外注費等)の総額のうち、一定割合(最大12%〜17%)を法人税額から直接差し引く(控除する)ことができる点にあります。利益に対する「経費計上(所得からの差し引き)」ではなく、最終的な「税金そのものを直接カット」できるため、キャッシュアウトを大幅に抑え、浮いた自己資金を次のAIツールや高度なシステム開発、あるいは追加の人材採用投資へと回す、企業の持続的な成長に向けた最高の黄金循環を創り出すことができます。

5. 申請は「事前」か「事後」か?

原則として、研究開発税制は、確定申告時に法人税申告書へ特定の明細書(別表)を添付して税務署へ申告を行う「完全事後申告」です。国や官庁、税務署への事前届出や計画承認等の手続きは一切必要ありません。

ただし、大学や、国の認可を受けた「一定の要件を満たす研究開発型スタートアップ」と共同研究や委託開発を行う「オープンイノベーション型」の税制優遇(高い税額控除率)を適用する場合に限り、事前の手続きが必要となります。

具体的には、取引相手のスタートアップ企業が税法上の要件を満たしていることについて、事前に経済産業省(大臣)へ証明書の交付申請を行い、交付された証明書の写しを確定申告時に添付しなければなりません。自社単独でのサービス開発と異なり、事前の申請スケジュールが絡む点に十分ご注意ください。

6. まとめ:実務で活用するための最初の一歩

Webサービスや高度なAIシステム、独自の解析アルゴリズムの開発を行うIT・Web企業にとって、研究開発税制は財務戦略上、信じられないほどのインパクトを持つ非常に魅力的な優遇税制です。

しかし、税務調査等の場面において、「開発活動に新規性や創造性はあるか」「人件費の集計範囲は情報解析専門家のみに適正に限定されているか」を国税庁・税務署から極めて厳しくチェックされるため、申告前の事前エビデンス(客観的証拠)の構築が絶対条件となります。具体的には、以下の3つの社内管理体制を今すぐ構築してください。

  • ① 開発計画書の事前作成・保存:プロジェクト開始前に、前述の「4プロセス」を明記したシステム開発計画書(設計ドキュメント等)を確実に作成し、社内稟議等を経て日付入りで保存しておくこと。
  • ② 情報解析専門家の特定と職歴整理:開発チーム内で専門知識を有する「情報解析専門家」を特定し、その専門性を客観的に証明できるスキルマップ、これまでの開発実績職歴書、社内OJT研修プログラムなどを整備しておくこと。
  • ③ 1分単位での工数・業務日報の記録:専門家であっても、バグ修正や保守運用など、他の一般業務と兼務している場合は、Gitのコミットログや業務日報等で「試験研究に専ら従事した時間割合」をいつでも適正に按分計算(日報等で客観的に立証)できるようにすること。

これらが曖昧なまま、決算申告時になって「エンジニア全体の給与の〇割を一律で経費にしよう」と大雑把に申告してしまうと、のちの税務調査で一発で否認され、多額の追徴課税(過少申告加算税や延滞税)が課されるという、深刻な経営ダメージ(致命的な金銭的不利益)を被るリスクが高まります。

自社の開発中のサービスやAIプログラムが研究開発の対象に該当するか、のちの調査に耐えうるどのような完璧なエビデンス(証拠書類)を揃えておくべきかについては、専門知識を持つ信頼できる税理士や、経験豊富なコンサルティング支援機関へ事前に相談されることを強くおすすめします。

※本記事は、令和6年4月現在の税制(租税特別措置法)に基づき作成しています。実際の税額控除の適用にあたっては、個別具体的な開発内容や財務状況により判断が異なるため、必ず顧問税理士や専門の相談機関へ事前確認をいただくようお願いいたします。

研究開発税制(IT・サービス分野)に関するよくある質問(FAQ)

Q1. 自社オリジナルのスマホアプリ(無料ダウンロード、アプリ内広告モデル)を新規開発していますが、対象になりますか?
A1. はい、十分に対象となります。
直接的な有料ダウンロードモデルだけでなく、アプリ内で広告を配信して「広告主から対価(広告収入)を得るモデル」も、税法上の「対価を得て提供するサービス(役務)」に確実に該当します。
Q2. 確率論や統計学を専門とする大学教授に、アルゴリズムの解析と設計を共同委託していますが、この外注費は対象ですか?
A2. はい、対象になります。
情報解析専門家の外部リソースへの「委託試験研究費」として試験研究費の総額に算入可能です。ただし、委託先との契約書や、データ解析(4つのプロセス)に基づいた研究計画、および報告書の受領エビデンスを確実に整備しておく必要があります。
Q3. 税務調査が入った際、情報解析専門家の定義はどのように追及されますか?
A3. 非常に厳格に追求されます。
税務署は「開発に従事したとされる従業員」について、学歴(数学・統計学・情報科学専攻など)、保有資格、過去のシステムエンジニアとしての開発経験職歴書、Git等の開発履歴(コミットログ)の提出を求めてきます。一般的な「UIコーディング」や「サーバー運用」ではなく、本当に「確率論や統計学を用いてビッグデータを解析・設計していること」を客観的に立証できるよう、会社として事前に職歴書やスキルマップ、実務報告書を整理しておくことが不可欠です。

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「自社開発中のAI・SaaSシステムが、研究開発税制(試験研究費税額控除)の対象になるか要件判定してほしい」「のちの税務調査で否認されないための、エンジニアの日報管理やスキルマップの整備を一緒に手伝ってほしい」「行政書士法や税法を100%遵守した、確実でクリーンな財務戦略を提案してほしい」など、サービス開発や資金繰り、税額控除にお悩みの経営者様は、どうぞお気軽に株式会社Resultの初回無料相談(対面、またはZoom等のオンライン対応可)をご活用ください。融資・補助金の調達実績11億円超、メディア出演実績多数の佐藤勇樹が、貴社の開発プロジェクトに最適なキャッシュフロー最大化プランを全力でサポートいたします。

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関連情報・出典参考リンク集

本記事で解説した「研究開発税制(試験研究費の税額控除)」に関する経済産業省公式ガイドラインや、株式会社Resultの一次情報リンク集です。

■ 経済産業省 公式ガイドライン・Q&A
■ 監修・支援機関ポータルおよび出演メディア

最終更新日:2026年7月29日 | 執筆・監修:株式会社Result 代表取締役 佐藤勇樹(中小企業診断士・認定経営革新等支援機関、公式X:@yuki_resultceo

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この記事を書いた人

佐藤勇樹のアバター 佐藤勇樹 中小企業診断士

千葉商科大学出身で、出身大学初の「中小企業診断士」の資格を取得。
大学卒業後、大塚商会に就職し3年働いたのち融資・補助金コンサルタントとして独立。
独立3年での融資・補助金の調達総額は9億1,431万円(令和5年12月時点)。
現在は中小企業診断士として、引き続き補助金コンサルタントとして補助金の申請・代行業務を中心にしつつ、自身の補助金コンサルタントのスキルを体系化した「補助金コンサルタント養成講座」を主催し、後進の士業の育成を行っている。
著書:中小企業診断士17人の合格術&キャリアプラン
2026年6月、ABEMAPrime#アベプラに補助金コンサルタントとして出演